拡大するEM技術による産業廃棄物の有用資源化と環境改善活動
−長野県からの現地リポート−
信州に広がる<環境汚染源を環境浄化源に変える農法へ>の試み
 U-ネットでは、地球レベルの環境問題の改善を図るため、200に迫る各地域のボランティア団体が善循環の輪を広めながらEM技術を共有した日々の実践活動を進めています。更に、自然資源との係わりを基に生計を立てている漁業、農業、リサイクル事業者の中にもU-ネットと同じ志で活動されている団体が多数有りU-ネットとの連携活動が拡大しています。そこで今号では、えのきだけ・巨峰・味噌などの生産で日本一の地場産業を持つ長野県における農を中心とした環境改善の現地リポートをお届けします。


きのこ栽培の<残渣・廃おが>を土壌改良材・農業資材に変える
 日本一のえのきだけ生産高を誇る長野県中野市(青木一市長、人口4万3千)では、真引川浄化作戦の中心メンバーである金子芳郎氏等が、きのこの生産から排出される<残渣・廃おが>をEM技術活用により有用な土壌改良材・有機肥料に転換する試みを平成14年に開始し、3年間に亘る野菜類の実験栽培が順調なことから、廃おがの再利用に自信を深めている。同市では、平成13年以降U-ネット(岩井節夫技術委員)の熱心な提案・支援と(株)イーエム総合ネットの技術指導等により、篠の井川本流・真引川のEMによる河川浄化やEMによる簡易農法の導入などを積極的に進めている。

 こうした中、河川浄化の中心的な役割を担ってきた金子芳郎氏(スタート時の同地区長、現市議会議員)は、市の基幹産業である「きのこ生産」の<残渣・廃おが>が年間70万トンにも達しその処分に困っている点に着目し、EM技術活用により何とか有用資材への転換が出来ないかと考え、自前の土地や仲間の休耕田に廃おがとEM活性液等を大量投入し、しばらく放置した後、南瓜、トマト、ナス、アスパラガスなどの栽培テストを積み重ねて来たもの。既に湿地やブッシュ地が立派な農地に転換できる事を確認している。金子さんたちの試みは、行政、きのこ生産者、農家、農業法人、EMグループなどとの連携強化により、更に本格的な資源リサイクルシステムに発展するものとして期待されている。


信州味噌製造から排出される<大豆の煮汁>を農業資材に変える
 長野県は信州味噌に代表される味噌の産地として有名であるが、製造過程で排出される大豆の煮汁は諏訪湖など河川湖沼の汚染源となりその対策費に莫大な資金を必要としてきた。こうした環境汚染源をEM技術の活用により農業用資材として再利用する試みが、平成15年10月から行われている。 (有)ドミソ環境の牧野勝さん夫妻と環境浄化を進める会信州代表の諏訪明子U-ネット長野県リーダー(中央)
(有)ドミソ環境の牧野勝さん夫妻と
環境浄化を進める会信州代表の
諏訪明子U-ネット長野県リーダー(中央)
 同実験は、生ごみリサイクル事業に取り組んでいる(有)ドミソ環境(注)の牧野勝副社長を中心に異業種協同組合ハイコープの補助事業の一環として駒ヶ根市、須坂市、塩尻市、茅野市、辰野町などの環境ボランティア団体、食品循環資源再生事業家、専業農家、味噌製造業者の協同作業により進められている。

 味噌製造工程から排出される大豆の煮汁はビタミン、アミノ酸、ミネラル、抗酸化物質などが多く含まれ、温度も80℃と高くEM活性液の培養に最適という。同培養液はEM研究機構の分析により、良質な農業資材になることを既に確認しているが、平成16年夏には、5軒の農家・約11町歩の田圃でテスト活用し、有機農法資材として活用できる見通しが立ちつつある。更に、平成17年度には同活性液の活用希望者が倍増する勢いである(牧野氏談)。環境汚染源だった大豆煮汁を農業用資材として本格活用するものとして期待されている。

<注>(有)ドミソ環境は「ゆたかな土」「きよらかな水」「さわやかな空」を造ることを社是としたベンチャー企業。現在は生ごみのリサイクルを主業務とし、下諏訪町、辰野町、岡谷市にまたがる学校・病院・特養ホーム・保育園・消防署・役所・ホテル・大手企業から排出される生ごみを農業資材に転換して近隣の農家に販売している。


小布施町では<休耕地の活用>で農業復活と町おこし
 長野県小布施町(唐沢彦三町長、人口1万2千)は、長年の街づくりが実り日本や海外から年間120万人もの観光客が訪れている。その街づくりの中核となっている(株)ア・ラ・小布施(市村良三社長)が、平成15年から休耕地の本格的な活用による農を中心とした町おこしに取り組んでいる。

 同会社は平成5年にNPOの先駆けとして住民出資による利益配当をしない会社として発足しているが、これまでに街の景観修復、花の街づくり、イベントの企画実施などユニークな活動を展開し大きな成果を上げている。農を中心とした町おこしは、同町が歴史的にも菜種、養蚕、果樹など農を基幹として発展してきた町であることから、「基幹産業としての農の再興」と「街の景観から田園の景観への進化」を実現するための事業として進めている(市村社長談)。

 また、町では、過去に同町出身で日本花の会事務局長を務めていた岩井節夫氏(U-ネット技術委員)の提案と助言を受けオープンガーデン方式など花の街づくりに成果を上げていたことから、同氏提案による農業へのEM技術の導入を進めている。平成14年度には、(株)ア・ラ・小布施がEM培養装置・百倍利器2台と1tタンク10台を導入し、りんご、ぶどう、なし栽培農家への培養液販売を開始し、EMブランド小布施果樹の出荷も始めている。

 また、平成13年から<小布施丸なす>の再興を目指し様々な企画を進めているが、平成15年からは、休耕地2町歩を借りて自前の栽培も開始している。更に、平成17年度には休耕地活用を4町歩に拡大し伝統の国産大豆・ギンレイや国産りんご・紅玉などを再興し、25町歩に及ぶ同町の休耕地を全て復活させたい(市村社長)としている。既に成功している町おこしに加え、日本における<農の復活のモデルづくり>になる事業として関係者から熱い期待が寄せられている。


JAが白馬村で<本格的な資源リサイクル養豚施設>を展開
 長野オリンピックのジャンプ競技で原田選手や舟木選手が日本中を沸かせた長野県北安曇郡白馬村では、JA大北(本部長野県大町市、西山隆芳組合長)が、畜産を農業の中心とした資源循環型農業の構築を目指し、近代的な養豚施設「はくばアルプス農場」を建設し、厳しい衛生管理のもとに平成14年から年間2万2千頭の豚の生産を開始している。

 同施設は、外部からの病原菌進入を徹底防止して抗生物質類の使用を排除するほか、豚にストレスを与えない豚舎環境の構築、飼育に良いとされるSPハーモニーウォーターやEM活性液や木酢液の活用など効果が確認された方策を積極的に導入している。また、周辺住民との融和を図るため施設外部への臭い排出を抑える対策なども徹底している。

 更に、豚の糞尿は、籾殻、EM、木酢等の活用により全て良質の肥料として近隣の農家に販売して有機米や野菜作りなどに活用する方針を採っている。今後は、「こうした資源循環型の近代的な畜産施設を日本全国に展開し、日本の食料自給率の向上と地産地消の普及に役立てたい(武田昭彦同施設副センター長)」としている。


駒ヶ根市の観光農園では<廃果・食べ残し残渣>を全て再利用
 観光農園・駒ヶ根フルーツランド(熊沢清夫社長)では、同農園で発生するりんご、桃、梨、ぶどう等の廃果や観光客の食べ残し残渣等の全てをEMにより発酵処理して再利用している。

 同発酵処理は、残渣を簡易破砕機で切断し、密閉できるポリタンクに入れ、EM活性液と水を加えて攪拌して密閉し発酵熟成させる。熟成期間は、気温の高い夏で1ヶ月、通常2〜4ヶ月程度。発酵後は、搾汁し噴霧器のノズルが詰まらない程度に濾して果樹の根元に灌注したり、春先の発芽前に葉面散布している。熊沢社長は、「園内では無駄になるものは有りません。発酵液にEMセラミックパウダーやニガリを加えるなどの工夫により農薬を使用しない栽培を実現出来ました」という。同発酵液は、乳酸菌、酢酸等の有機酸を含み、酸度(pH)の強いエキス(アグリビネガーと呼称)として病虫害防除他に高い効果を上げている。

長野県各地で広がるEM技術活用の事例の一部を紹介
茅野市ではボランティア団体がEMで池の浄化や学校トイレの臭い消し活動
 ボランティア団体・美サイクル茅野では、市の運動公園の「ジャブジャブ池」が夏になると<アマミドロ>で覆われて悪臭が発生し池底にはヘドロも堆積していたため平成14年6月からEM活性液の点滴投入やEMセラミック・ボカシ槽の敷設を進めた結果、平成15年秋にはヘドロが完全に消えアマミドロの発生も見られなくなっている。
 しかしながら、平成16年春に池の改修工事(中央部を深く掘り下る)後は、ヘドロや悪臭の発生は無いもののアマミドロが再発生しており、EM活性液の投入を継続して経過を観察中である。
 また、同ボランティア団体では、両角光子副会長を中心に市立宮川小学校の生徒と教職員便所の臭い消し対策として<生徒と教員によるEM活性液の散布活動>を取り入れ、消臭効果を上げている。

須坂市では行政が市営公園の池の浄化にEMを活用
 長野県須坂市(三木正夫市長、人口5万4千)では、市民の憩いの場として長年親しまれてきた臥竜公園の竜ヶ池の悪臭対策に平成16年5月からEMを活用して効果を上げている。同公園の山岸衛所長を中心にEM活性液の培養投入や、流水口へのEMセラミック敷設を進めた結果、池の臭いが発生しなくなり、池の透明度が増してきている。
 同対策開始のきっかけは、15年に同管理事務所長として赴任してきた山岸さんが池の周囲の桜の古木再生にEMが活用されている点にヒントを得て EM技術の導入を思いついたもので、岩井節夫U-ネット技術委員が支援している。同公園のボート管理者の話では、昨年まではボートの清掃に水道水を使用していたが、池の水質が良くなり水道水の使用を止めている。

小布施町桜井甘精堂・泉石亭庭園の管理にもEM技術を活用中
 桜井甘精堂は日本屈指の伝統と味を誇る創業200年の日本菓子店であるが、その本店の食事どころは、美味しい料理と素晴らしい庭園の景観が好評で、連日客で賑わっている。同庭園・泉石亭の設計と管理を委託されている金澤雍夫さんは、庭園内の管理にEM技術を活用し、庭木の活性化や流水の浄化に大きな成果を上げている。
 特に、特に、流水の管理にEMセラミックを活用し始めてから水の透明度が増しメダカの稚魚が増えているという。現在は、農薬を使用しない庭園管理に挑戦している。

阿瀬知川から長島温泉ヘと環境浄化活動の拡大
〜阿瀬知川から松川の浄化活動へ〜
 三重県桑名郡にある長島温泉に隣接する松川は、上流域民家からの生活雑排水による排水などのため水質汚染が進み、風向きによってはナガシマスパーランド等への来場者用駐車場などで春先から異臭が漂いはじめるため、観光産業にとって芳しくない状況が発生するようになってきた。
 近接する四日市市の阿瀬地川では、既に一昨年にEMによる悪臭とヘドロ対策で目覚しい改善がなされていたことから、昨年の3月、U-ネットの技術委員である小川さんに対策の相談があり、昨年の4月からボランティア活動として活性液の投入等が開始され、3ヶ月後にはほとんど臭気も気にならない状態となった。この実績により、その後活性液の供給と指導業務を受託。1tタンク2基により活性液を拡大培養し、200リットル/週の投入が継続され、併せてEM有機団子も適宜投入されたことで、少しずつではあるが改善の傾向を示しつつある。

〜松川における改善実績から、ホテル、ナガシマスパーランドへと浄化活動が新たに展開〜
 上記の実績から、展開している活動状況と変化について、小川さんと長島観光開発(株)総務課の山田係長から、現場案内と状況説明を受けた。
 ホテル花水木では庭園の小川に活性液を投入するのに併せて塩素の使用が中止されたことにより、小川の小石が酸化着色する現象が改善されて本来の素材の色(デザイン想定色)に戻りつつあった。また、小川に沿った建物の、窓ガラスについた塩素による汚れも改善されてきているとのことであり、この小川に小鳥がきて爽やかに囀りながら水を飲む姿は環境が改善された証のようであった。
 スパーランドでは30mの高さから歓声と絶叫と共に滑り下り着水時壮大な水しぶきを上げるアトラクション「シュートザシュート」の池と、テレビドラマ「西部警察」の撮影舞台となった「ウォーターエース」の池に活性液が継続して投入され、底部にEMセラミックスが敷設されている。「シュートザシュート」の池では敷設当時見えなかったセラミックスがハッキリ見えるように透視度が上がってきている。
「ウォーターエース」の池でも目に見えるように透視度の改善が図られ、循環水の放流口付近にはこれまで見られなかった小魚の泳ぐ姿があり、小川さんも驚く状況に変わってきている。

 ホテルナガシマでは湯あみの島(奥入瀬等の造成景観を介して各露天風呂を楽しむ)の川に滔滔と流れる800tの循環水の汚染対策としてEMが活用されており、水質改善はもとより、ここにおいても塩素によって酸化着色されていた石の表面が還元されはじめ、元の自然な素材の色に還りつつあった。 水質が改善している水辺での長島観光開発(株)総務課 山田係長(左)と小川U-ネット運営委員
水質が改善している水辺での長島観光開発(株)総務課 山田係長(左)と小川U-ネット運営委員

 長島温泉から少し北に行き長良川の河口堰の傍にある「なばなの里(同経営)」は四季折々の花と巨大な温室内に咲く球根ベゴニアがすばらしいオアシスであり、小川さんには、将来池を含めてこれらもEMで管理したいとの抱負があるようであった。
 観光産業は年中無休に近い状態で来場者に気持良く過ごしてもらうため、浄化の過程であっても水辺環境の大きな変動(一時的な藻の大発生や水の色の変化)が許されないので、活性液の濃度や質に対して、より繊細な検討と留意が必要であるとのことであった。
 観光地やレジャー施設における温泉排水の処理の難しさ、国の基準に沿っているとはいえ安易な塩素や消臭剤の活用による環境破壊の進展に対して、これらは、これまで遅遅として進まなかった浄化改善に一筋の灯りを求める活動であり、まだ着手から日が浅いが、確実な効果も表れてきているので、今後の活動に大きく期待したい。


自然の復活、生物の多様化を実現
〜寒河江ロータリークラブ、EM研究会の活動〜
 山形県寒河江市内の、最上川に注ぐ一級河川、沼川。県内の河川水質ランキングでは常にワースト3に入っていたこの川が、EMの浄化により今では驚くほどたくさんの小魚がいきいきと泳いでいる川へと変わった。
 寒河江ロータリークラブのU-ネット東北西部地区大沼運営委員は、15年前から農業資材としてEMを取り扱うようになり、始めは一商品と見ていたものの、その後の活用分野の幅広さに興味を持ち、比嘉教授の講演会に頻繁に足を運ぶようになって現在の活動に至っているという。

 沼川には、市内に下水道がないため、6kmにわたって工業廃水、農業廃水、家庭廃水が入ってくる。水量もあまり多くなくヘドロが溜まってしまっていた。そこで、ロータリークラブの社会奉仕の仕事として社会奉仕環境保全委員会に沼川の浄化を提案し、試験的に使用。その後正式に使用されることが決まり、2001年の4月に投入を開始して7月には成果が現れてきた。ヘドロがなくなり、鯉、小魚のほかに、魚を餌とするゴイサギ、アオサギ、カワセミも出てくるようになった。投入量は週に1.5t。ドラム缶2〜3つを入れている。この様子は新聞、市報にも紹介され、今年はロータリークラブ100周年とのことで、記念事業としても力をいれている。

 大沼さんと一緒に案内をしてくれた安孫子さんは現役の消防士で「火事は酸化と同じですからEMの活動と消防の活動は同じなんです。」とユーモアたっぷり。「美しい山形 最上川フォーラム」の委員も担当し、「現時点で川環境に関するグループは調査をするところまでしかできていない。しかし大事なのは実行。これを実行に移し、美しい川を復活させられるのがEMの力。」と頼もしい。趣味の畑も無農薬でEMをフル活用。作物は見事な出来栄えで、今後は活動の協力者をもっと増やしたいとおっしゃっていた。
 他にも市内の西根小学校のせせらぎ池にEM団子を投入。前校長からの依頼とのことで用務員の方が管理を行うことになったものの、具体的な対策がなかった。そこで大沼さんの協力でEMを使用。今年の夏からEM投入を始めたばかりだが、すでに水は澄み、多種の生物が生存した非常に良いビオトープとなっている。

 寒い地域のため、冬場の活性液づくりにも苦労があるが、大沼さんのアイディアで農業用の暖房を利用して対策をとっている。水は雨水を使用し、米ぬかを利用するなど工夫もこらした。また豆腐屋からでるおからを使用してボカシを作るなど研究にも余念がない。
 その他、さくらんぼの木の蘇生、クリーンセンターのゴミピットの消臭、米作り、EM勉強会、食品会社の浄化槽への利用・・・と、多分野に活用を広げており、今後もEMの力がこの穏やかな風土を引き継いでいきそうだ。

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大沼運営委員(左)と安孫子さん(右)


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