日本の食料基地北海道における"EMによる無農薬有機栽培"
 今回はU-ネットの福田副委員長と辻さんから、EMを活用した(有)松家農園における水田雑草抑制、農業生産法人アリタにおけるかぼちゃ栽培、及び天塩町における町民農園について、また大滝村における生ゴミと厩肥処理装置の稼動状況については、(株)K&Kの石川営業マネージャーに案内と説明を受けながらの取材であった。

EM完全無農薬で、除草作業の要らない稲作を目指して
 道央旭川市の東に隣接した東川町の(有)松家農園では水稲、切花栽培等の傍ら、発芽玄米の生産出荷も行うという複合経営が行われている。松家農園における無農薬有機栽培による水稲栽培は平成11年から開始され、有機JAS認定栽培が平成13年から開始された。
田圃で左から辻さん、松家さん、福田副委員長

田圃で左から辻さん、松家さん、福田副委員長
 栽培管理上の大きな課題である水田の雑草対策として各種試験を行い、昨年から試験的にEM糖蜜除草を取り入れた。試験はJAS認定農地の30aの水田8枚(計2.4ha)で行われた。活性液は2,000倍拡大培養のEM活性液(製造コスト約8円/リットル)が使用されていた。生産管理の内容は、秋処理として活性液を80リットル/10a投入し、5月23日の耕起後にボカシを40kg/10a、発酵鶏糞を300kg/10a施し、6月3日の代掻き・湛水時に活性液を100リットル/10a投入、6月5〜6日にかけて田植えをし、6月15〜16日にEM糖蜜除草液(活性液:糖蜜:水=1:1:18)を300リットル/10a投入、7月上旬に再度、EM糖蜜除草液を200リットル/10a投入した。期間中、2,000倍拡大培養のEM活性液は400リットル/10a使用されたことになる。この結果、昨年より雑草は減り、カルチ(除草機)がけは多い所で3回、最も少ない水田ではしなくても良いような状態であったが1回だけ除草したとのことであった。さらに、雑草対策は深水湛水管理と適期(代掻きから5日以内)のEM糖蜜除草液投入が重要と思われる。有機栽培では肥料の後効きが問題であるが、作況調査で8.5俵/10aの結果が出ており、最終的には9俵/10a程度を予測している。来期は肥料の遅効き対策として浅起し(5cm)をする予定で、これを行えばトラクターの燃料減による生産コストも下げることが可能と考えている。技術ノウハウの蓄積が重要である。現在、当東町では4戸/600戸の農家が有機栽培米の生産に取組んでいる中で、当農園では来年はこの生産方式を10haまで拡大し、3年後には仲間を広げて30haまで拡大したいなどと話していただいた。また、販売上重要な食味に関しても、今は十分消費者に満足を得られるまでに改善できている等の話も伺った。
 なお、同様な生産方式による新篠津村の事例では、今年1回も機械や手取りによる除草をしていないとの報告を受けた。


連作障害に負けるのかとの思いが杞憂に
 農業生産法人アリタのある遠別町は、旭川市から約100km北に位置し、今は水稲作付けの北限であり、水稲栽培としてはもち米が生産されている。(農)アリタは建設会社を経営していた有田さんにより、公共事業の削減に対する雇用創出の目的で4年前に設立された。農薬と化学肥料で疲弊していた農地4haを借り、自前の重機を活用して堆肥とEM活性液で土壌改良から始まり、かぼちゃと大豆に挑戦し、その後は生産性等からかぼちゃのみの作付けとなった。有田さんのこの新しい取り組みはマスコミ等で取り上げられ一躍有名になった。しかし、3年目の昨年は肥料分の不足も大きな原因であった可能性はあるが、全くの不作で連作障害かと頭を抱えてしまった。そこで、昨秋、通常では窒素過多を懸念される生牛糞15t/10aを地表に施用し、その上にEM活性液を250リットル/10a散布、そのままの状態で放置・越冬し、今春5月中旬に、肥料として醗酵鶏糞と生ゴミボカシ堆肥をそれぞれ300kg/10a散布し、それに2,000倍拡大培養のEM活性液の3倍希釈液を480リットル/10a散布、ある程度乾いた後、ロータリー耕で表層10cm程度に薄く鋤きこんだ。その後にマルチがけ、6月中旬に機械と人手で定植し、EM活性液の100倍希釈液を200リットル/10a散布した。さらに病害虫防除と成長促進を目的として、6月下旬〜8月下旬の間に5回/月程度EM活性液の10〜15倍希釈液200リットル/10aを葉面散布した。今年は定植後8月まで旱魃状態であり、周辺農家の葉が弱った時期にも堆肥による保水効果もあったのか、弱ることもなく周辺農家に驚きを与えた。収穫時期となり果が充実し、ウドンコ病が発生していたにもかかわらず葉はしっかりしていた。連作4年目の今年が最高の出来となり、最も市場性の良い5玉/10kgが最も多く、規格外は殆どない状態であった。収穫直後の糖度が10.3程度で、10日前後の風乾後の出荷時には12以上の糖度が見込めるかぼちゃが、45t程度収穫できるとのことであった。支援者との懇談時に収穫直後のかぼちゃのてんぷら等を食したが、ホクホク感とうまさがすばらしかった。なお、当地における35戸の畜産農家中34戸が牛にEMを与えているとのこと。これによる生牛糞の効果も大きかったのではないだろうか。

何故道北に町民農園が
 町民農園のある天塩町は、日本海に面し天塩川の河口に市街地が形成され、最北端の稚内まで約70kmに位置する官公庁及び畜産と漁業を中心とした町であり、畑は殆どみられない。本田町長の発案で60a弱の農業試験場の跡地を有機栽培による町民農園とし、同農園友の会会長の田所政雄氏、浅田助役を中心に伊藤課長補佐、米田主幹、畜産農家で同会役員の和田さんにより基本的な計画と管理が行われ、種蒔きや草取り等は会員のボランティアによって行われている。作付け計画に基づき、大根、ジャガイモ、トウモロコシ、玉ねぎ、かぼちゃ、イチゴ、サツマイモ、ヤーコン、里芋、長芋、西瓜、トマトがつくられていた。この農園では全ての作物にEMボカシが施肥されていた。化学肥料や農薬は使用しないで牛糞、乾燥鶏糞、醗酵鶏糞、ヒトデの粉末等が作物に合わせて施肥されていたが、肥料過多の影響も顕在化しているということで、福田副委員長から、これまでのEMボカシに加え、EM活性液を大量施用する提案がなされた。町長、助役、関係者を交えた説明会で、町長から、イベントに出店すれば美味しさが有名なためすぐに売切れる。また、就職のため上京した家族や親戚に対して農園産の野菜を送る人や首都圏のグルメな個人からも注文がきているとの話を伺った。その後、町長を先頭に農園に行き、現地で種蒔き、管理等について話し合った後、準備していただいた食味会で町長の自慢に違わない料理を味わうことができた。なお説明会の中で、町長からシジミ生産の問題や天塩川をきれいにしたいとの話があり、福田副委員長からEM団子やEM活性液の使用を推奨する説明があり、U-ネットが保有する資料を送ることとした。

自然循環と有機農業を支える生ゴミ処理機、厩肥堆肥化の状況要
 札幌市から南西50km、千歳市の西に隣接する大滝村では、生ゴミと厩肥の堆肥化を行う『有機物再資源センター』に(株)K&Kのシステムが導入され(U-ネット通信27号参照)、昨年の4月から稼動している。村の委託により運営管理しているNPO法人の鎌田さんによれば、生ゴミ3t/日処理の設備ではあるが、観光シーズンには一時的に3tを超える場合もある。これには対応できるが、丸ごとの西瓜・メロンやオジヤ状のご飯の残りは、計画水分値(70〜80%)を超え順調な操業を阻害するので水分調整が苦労であるとのことであった。製品は袋詰め肥料と、4t〜6t/日搬入される厩肥への混合に使用されている。これにより醗酵した堆肥はほぼ計画通り販売できているとのことであった。



南房総地区で拡大するEM技術活用による河川等の浄化活動
館山市では住民中心の河川浄化活動が拡大
〜期待される行政による支援強化〜

 千葉県館山市(人口51,000人)では、NPO法人安房の海を守り育む会(仲山邦松理事長)が平成13年から同市舟形地区を流れる宇田川の浄化活動に取り組んでいる。14年6月にEM培養装置を会員(福原一事務局長)宅の敷地内に設置し、二次培養して毎週約1トンの活性液を宇田川に投入。17年10月には同地区・船形小学校裏地に第二基地(培養装置2基)を設置し活動の輪を拡大している。同NPO法人の活動は、清酒「安房の海」売上金の5%を基金として運営されているが、宇田川を中心とした河川の浄化活動に賛同する個人や企業からの資金援助が相次いでいる(福原事務局長談)という。宇田川は、既に悪臭が解消しヘドロも減ってきており、第二基地の本格的な稼動により近隣河川の浄化、更には、館山湾全域への浄化に発展するものと期待されている。
廃品冷凍トラック活用による会員手作りのEM培養第二基地

廃品冷凍トラック活用による
会員手作りのEM培養第二基地
 こうしたボランティアやNPOによる環境改善活動については、全国的に市町村行政からの資金や施設設備等の支援が相次いでおり、館山市においても行政による同種活動への支援強化が期待されている。


行政とボランティアの協働モデル
〜画期的な生活排水浄化に関する白浜町規則〜

 千葉県の最南端に位置する白浜町(人口6,000人)は、観光資源でもある綺麗な川・海を取り戻すため、全国に先駆けて平成15年4月から「白浜町生活排水浄化に関する規則」を施行し、官民一体となったEM活用による本格的な環境改善に乗り出している。同規則では、町の責務、住民の責務、事業者の責務を明記した官・民・業をあげての水質浄化を定めている。(詳細はU-ネット通信2003年9月号にて既報の通り)
 EM活用による排水浄化活動は、平成15年5月に町の予算によりEM培養装置・百倍利器1基を役場敷地内に設置し、平成16年4月にはU-ネット支援による二次培養タンク2基を増設する等の設備面を充実させながら、行政が主にEM資材の購入・一次培養、広報誌・防災無線を通じた住民への情報提供を担当し、ボランティア団体白浜水質浄化研究会(大平晃也会長)が二次培養と住民へのEM活用方法の説明や配布などを担当している。同施設で培養された活性液は、各地区の責任者が毎週20lのポリタンクで地域の住民に配るほか近隣の住民160〜200人も毎週2lのペットボトルで持ち帰り、「排水溝に直接流す」「米の研ぎ汁発酵液を作り流す」などの方法で河川の浄化に参加している(同会長談)。
 既に、町内を流れる小河川の悪臭とヘドロが消え、昔の海岸が蘇っている。
 町では、「住民に活動を強制することなく側面支援に努めた結果、ボランティア団体の努力に後押しされ、環境改善への住民意識が向上し活動も活発になってきている(加藤博和土木環境課長)」という。こうした白浜町における官民協働による環境改善方式は、南総地区におけるモデルとして近隣市町村への拡大が期待されている。

町の商工会が環境改善を主導
 千葉県千倉町(人口13,000人)は、日本で唯一の料理の神様を祭る「高家(たかべ)神社」の有る町として知られており、料理店の経営や料理人を目指す人が多く訪れている。同町商工会では、「料理の神様」とのかかわりから、町づくりの一環としてEM技術を活用した減農薬作物の普及に取り組んでいる。
 数年前に商工会支援の「EM農法研究会」を立ち上げ、地場産業である水産加工業から出る魚滓を活用したEMぼかしづくりを進め、現在約30人が減農薬の販売用野菜や家庭菜園に活用している(佐久間事務局長)という。
 平成18年度には、千倉町、白浜町など近隣8町村による大合併(新市、南房総市の誕生)が予定されており、合併を契機として各地区での先覚的な環境改善活動の実績を活用し、全域に拡大されることが期待されている。



千葉県勝浦市が浜勝浦川の浄化にEM技術を本格的に活用
平成17年7月からは民間業者との共同プロジェクトもスタート
 千葉県勝浦市(人口23,000人)は、輪島市、高山市とともに日本三大朝市の開催地として有名であるが、朝市の中心街を流れる浜勝浦川の汚濁と悪臭に長年悩まされていた。同市では環境防災課(田原彰課長)を中心に平成12年頃から各種バイオによる悪臭の除去策を講じてきたが、一部住民や近隣白浜町のEM活用による改善効果に注目し、平成16年5月にEM培養装置(百倍利器1基と二次培養1トンタンク3基)を購入。同6月から市民への無償配布による家庭での本格的なEM活用を開始している。
EM培養装置の導入に当たっては、同課職員2名を白浜町に派遣し、導入経過、運用方法、導入による河川浄化への効果などを詳しく調査しているという(同課、窪田副主査)。EM活性液の培養と配布は、環境防災課職員の厳しい品質管理の下で行われ、EM効果を実感した浜勝浦川流域住民も積極的に環境浄化活動に参加している(同課談)。
EM培養装置と推進役の環境防災課職員(右側2人)

EM培養装置と
推進役の環境防災課職員(右側2人)
この結果、平成16年度中に年間32トンの二次活性液を培養し、13トンを住民に配布、16トンを市職員が浜勝浦川に直接投入している(同環境防災課)。平成17年も同様な作業を継続し、既に悪臭が激減しボラなどの魚が大量に観察されている。

環境改善の定着化と改善データの収集へ
 同市では、こうした活動の拡大定着化とEM活用による改善効果をデータとして把握するため、平成17年7月から(株)オオバとの共同事業による「浜勝浦川 環境改善プロジェクト」をスタートさせている。同プロジェクトは、(株)オオバ(EM事業推進部)の企画提案によるもので、覚書により全てのデータが公表出来ることになっている(同社担当、渕上浩一氏談)。
 平成18年度からはEM活性液の投入量をほぼ倍増させ、EM団子も並行して投入する計画となっている。評価方法は、?川底の底質表面を観察し見た目の変化で評価、?地域住民による変化確認をアンケート実施して評価、?水質・底質・底質溶出量等を第三者機関で評価、など多角的な方法が採用されている。また、調査地点も上流部から河口部までの5箇所のほか、気候変化による影響を考慮して隣接河川の調査地点も加えるなど徹底したデータ把握を進めている。同プロジェクトについては近隣市町村も注目しており、結果次第で今後のEM活用方向に大きな影響を与えるものと思われる。



Copyright(C) United Networks for Earth Environment (U-net) All rights reserved.
掲載記事・写真の無断転載を禁じます。