日本の歴史と文化の源、奈良県域に広がるEM活用の波
〜大神神社に続き、東大寺でもEM技術の活用を開始〜
 奈良県は、現存する偉大な神社仏閣はもとより、地中に埋蔵されている古墳群や、美しい山河が数多くあり、古来多くの人々をこの地に引き寄せている。
 しかしながら、この地に源流を持つ大和川は生活排水で汚れ、世界遺産に名を連ねる観光資源も、恵まれた環境を維持する事が容易ではない状況にある。こうした中、有用微生物群(以下EM)を活用した環境改善活動が大きな広がり見せている。平成20年1月からEM活用による環境改善に取り組んでいる東大寺を中心に現地リポートでお届けする。
東大寺EM活用は菰川浄化の市民ボランティア活動が起点
−奈良市河川課からのEM紹介−
 東大寺では、池の汚染が進みかねてから解決策を模索中であったが、これまでの提案では多額の設備投資と維持管理費が見込まれ苦慮していた。そうした中、奈良市河川課(上田課長)からEMを活用して河川浄化に取り組むボランティア団体・NPO地球環境共生ネットワーク(以下U-ネット、奈良県代表後藤和子)を紹介された。同寺では、早々EM活用事例の調査、各種検討会、勉強会を続け、約半年後の平成19年末に、EM活用による水質改善に取り組むことを決めた(東大寺庶務執事談)という。
 一方、紹介元となった奈良市では、市中心部を流れる菰川の水質悪化が問題となり、長年にわたり流域住民と行政の協力による水質改善に取り組んでいたが、大阪道頓堀でのEM活用による水質改善実績に注目。平成17年からU-ネット奈良後藤さんによるEM技術指導を受け、米の研ぎ汁EM発酵液やEM団子の投入を開始し、悪臭が軽減するなどの効果を上げている(詳細はU-ネット通信2006年11月号参照)。
EM活性液を南門近くで松に散布する東大寺の職員たち
EM活性液を南門近くで松に散布する
東大寺の職員たち


−東大寺がEM培養装置などを購入−
 同寺では、寺域内の池(大湯屋脇池、長池、鏡池)7,700m3と池をつなぐ水路約260mの水質浄化と維持を目標に、平成20年1月10日から2年間にわたる、EM活性液、米の研ぎ汁EM発酵液、EM団子の定期的な投入を始めている。また、当初の目標に加え、南大門から大仏殿中門に至る松の立ち枯れが続いているため、EMによる松の活性化実験(50〜150本)にも取り組んでいる。
 寺では、こうした作業を職員が実行するため、EM培養装置(一次培養の百倍利器1基、ヒーター付の二次培養タンク1基)、散水装置などを購入した。現在では、EM活性液の培養や散布作業を進めている。作業計画の作成、装置の運用基準、操作方法などは、(株)EM助っ人ねっと(名古屋市、岡正典社長・U-ネット技術委員)が当たっている。

−奈良県各地に広がるEM活用−
 奈良県内におけるEM活用は、前出の後藤さんたちの活動を中心に大きな広がりをみせている。斑鳩町では、平成12年から生ごみの減量化に取り組み実績を上げ、生駒市においては、平成17年から池の浄化を開始し、天理市でも平成19年から大和川の源流・布留川の浄化を開始している。また、日本最古の神社と言われている大神神社・三輪山(桜井市)でも、平成18年から、EM技術の開発者・比嘉照夫琉球大学名誉教授の直接指導を受け、土壌改良などが進められている。


磁力熱源による生ごみリサイクルの新システム開発
〜生ごみ搬入や製品化過程でEM技術を積極的に活用〜
 生ごみは、家庭生ごみをはじめ、食糧の生産、加工、販売、消費の各過程でも排出され、多岐にわたる。こうした生ごみの大半は、可燃ごみとして大型焼却施設で燃やされ、大量のCO2を排出している。
 最も簡便で安上がりな生ごみリサイクルは、各家庭で発生する生ごみを各自がEMで発酵させ、家庭菜園や花づくりの堆肥として活用する方法である。U-ネットでは、こうした活動の普及を積極的に進めているが、今回は、比較的大きな規模でのEM活用リサイクルの事例として、各種の生ごみリサイクルシステム(プラント)導入の概要を紹介する。

−家庭生ごみのリサイクルシステム−
 EM技術を活用した家庭生ごみのリサイクルシステムとしては、岡山県倉敷市船穂町の「EM生ごみ堆肥化プラント」(平成8年〜、700世帯)が最も古い。地域ぐるみの取り組みが特徴で、地域のシルバーの方々が嬉々として働き、生産された生ごみ堆肥は全国に販売されている。
 モデル事業としては、岐阜県岐阜市・NPO環境浄化を進める会の「生ごみリサイクルモデル事業」(平成11年〜、1100世帯)、茨城県取手市・NPO緑の会の「生ごみリサイクルモデル事業」(平成14年〜、500→1000世帯へ)がある。
 また、大規模な生ごみリサイクル施設としては、岩手県盛岡・紫波地区環境施設組合が、平成4年から10万世帯を対象に「地域資源リサイクル事業」を開始している。悪臭に悩まされた結果、平成16年からは事業所内にEM培養装置を設置し、生ごみ搬入後の堆肥化処理過程でEMを積極的に活用し、成功している。

−事業所系生ごみリサイクルシステム−
 ホテル・レストラン系生ごみのEM活用事例としては、北海道札幌市の札幌グランドホテル・K&Kシステムによる「ホテル・レストラン生ごみリサイクル」(一日1トン、平成10年〜)が最も古く、生ごみ排出(札幌グランドホテル)→堆肥化センター((株)K&K社)→近郊農家(稲作、畜産)→農産物利用(札幌グランドホテル)による、完全リサイクルを実現している。この方式は、その後、JRタワーホテル日航札幌(平成15年〜)、JR55サッポロ(平成18年〜)へと拡大している。
 スーパーマーケットでも、クイーンズ伊勢丹(調布店)が平成10年から、生ごみをEM堆肥化して契約農家に提供、農家が生産したEM野菜をスーパーが全量買い上げ販売するリサイクルシステムを取り入れ、新規開店のスーパーにも広げている。
 企業では、松下電器系列の企業が、従業員食堂で排出される生ごみを乾燥機で乾燥し、宅配便でEM堆肥化センター((有)池田産業)に届け、完成したEM堆肥を日本オーガニックエコロジーネットワークを通して近郊農家に提供している。この「堆肥化システム」は、平成11年に稼動を開始し、軌道に乗せて有機農業の推進に役立てられている。

−大型リサイクルシステム−
 農産地では、農業・畜産業、地場産業、学校、家庭などが排出する残渣・生ごみを燃やさずに、EM技術を活用して、一括リサイクルするプラント造りが進められている。
 北海道伊達市大滝地区(旧大滝村)では、平成16年に「大滝村有機物再資源化センター」を建設。同村で発生する全ての有機物残渣(農業残渣、事業所食品残渣、家庭食品残渣、剪定残渣、家畜糞尿)をEM技術の活用により発酵・堆肥化して農業に再活用する方式((株)K&K社のシステム)を導入している。このシステムは、その後、北海道三笠市が、平成19年から業務委託方式で稼動を開始し、平成20年には北海道鷹栖町でも4月から直営方式での同システム稼動を開始する。
 また、新しい試みの生ゴミシステムとしては、福岡県行橋市の(株)マルタが、広域連携等バイオマス利活用推進事業(農林水産省補助事業)として「eプラン生ごみリサイクルシステム」を開発。第1号機を福岡県行橋市に建設(処理能力一日1トン)し、目下試運転中。このシステムの特徴は、生ごみの乾燥に、磁力を利用した燃焼方式(特許)を活用し、石油系の燃料を使用しないこと((株)マルタ金田社長談)である。
 ここに搬入される生ごみは、スーパー、食品産業など事業所系列のものを予定しており、EM活用で高品質・高付加価値のEM炭化製品、EMペットフード、EM堆肥を販売する(同)。

磁力熱源利用のバイオマスシステム外観
磁力熱源利用のバイオマスシステム外観


子供たちとともに守る安房の海
〜黒潮の海に繋がる河川を浄化中〜
 海に囲まれ、その恩恵を受けた千葉県房総半島。その南端に位置する館山市は、黒潮の影響から日本での珊瑚礁の北限でもある。その豊かな海と河川の浄化に尽力している「安房の海を守り育む会」(仲山邦松会長 会員119名)を訪れた。

−美浜「鏡ヶ浦」の再生の道−
 同会事務局長の福原一さん(U-ネット会員)は、「房の海」という清酒を販売し、売り上げの5%を海岸保全基金にするという画期的な販売方法を開始し、基金を活動資金とした同会を有志とともに平成13年に発足させている。
 会では毎週日曜日に会員と近所の小学生で事務局の前を流れる「どんどん川」や「宇田川」を浄化している。この日も、会員9名と市立船形小学校の児童13名が浄化活動に参加。
「安房の海を育む会」の皆さんと船形小学校の児童の皆さん
「安房の海を育む会」の皆さんと船形小学校の児童の皆さん
(福原事務局長は後段右から3番目)
 事務局の倉庫には培養装置2基、船形小学校に平成17年に設置された第2倉庫にも2基あり、地元飲食店等の協力もあり、毎週平均2.5tもの活性液を培養し、川に投入している。
 ここでは子供たちはボランティア活動を通して、地域住民から環境問題と道徳を学べる場となっている。 
 平成14年6月に始まった河川への投入により、わずか3ヶ月で宇田川の悪臭は1/3に軽減し、ヘドロに糸ミミズが大量発生し、今までにはなかったアオサまで発生した。
 5ヶ月後には、真っ黒だった川底の表面のヘドロが消え、砂がほぼ全面に見えるようになり、ボラの稚魚が大量に泳ぎ、今までいなかった鳥の飛来も確認された。
 平成16年春には、20年ぶりにバカカイ(青柳)が発生し、夏には絶滅危惧種に指定されているナミノコガイが30年ぶりに復活した。
 また、昨年11月には、宇田川に初めてサケの遡上が確認され、 大変な話題となった。
 近年、豊かな恵みをもたらす黒潮が、東京湾に入り込まず、沖合20〜30kmも南下しているなど、温暖化の影響も叫ばれているが、 この流域のヘドロ消失は、会の推計によると500tにもなり、地道な会の活動が鏡ヶ浦の復活の足がかりになっている。

−「館山川と海再生プロジェクト」始まる−
 館山市や教育委員会、観光協会、地元新聞社である房日新聞、地元スーパーのジャスコ館山店の後援により、市内を流れる汐入川にEM培養施設を作り、大量に活性液を投入することを目的としたプロジェクトが平成20年4月に始動する。
 まずは、3月半ばにジャスコ館山店でパネル展示をし、環境問題をより多くの市民に知ってもらう機会となった。
 イオングループといえば「木を植えています未来の子供たちのために」の環境スローガンを掲げるイオン環境財団を有し、環境保全活動、社会貢献などに積極的な企業なので、非常に理解があり、プロジェクトの躍進が期待されている。


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